--- title: "NPO向け広告 Google Ad Grants(アドグランツ)とは?" description: "Google Ad Grantsの日額329米ドルと月額1万米ドルの関係、使い残しを繰り越せない仕組み、通常広告と同額の価値にならない理由、申請前のウェブサイト要件を解説します。" date: 2026-03-19 updated: 2026-07-21 category: "Google Ad Grants" tags: ["制度概要", "申請・審査"] official_sources: ["google-ad-grants-offering", "google-ad-grants-budget-bidding", "google-ad-grants-ad-quality", "google-ads-ad-rank-definition", "google-nonprofits-japan-eligibility", "google-nonprofits-five-steps", "google-ad-grants-activation", "google-ad-grants-website-policy", "google-ad-grants-mission-campaigns", "ad-grants-conversion-tracking"] related_articles: ["google-ad-grants-website-requirements", "what-is-conversion-goal-point"] draft: false --- Google Ad Grants(アドグランツ)は、Googleが対象となる非営利団体へ毎月1万米ドル分の検索広告を提供する助成制度です。広告費を現金で受け取る制度ではなく、Google検索にテキスト広告を掲載するための広告枠を利用します。 月額1万米ドルは、1日あたり約329米ドルの上限を30.4日分積み上げた金額です。その日に使わなかった分を翌日へ繰り越せないため、毎日ほぼ上限まで配信しなければ月額枠を使い切れません。 しかも、1万米ドル分の助成枠は、通常のGoogle広告へ1万米ドルを支払う場合と同じ価値ではありません。Ad Grantsには独自の品質フィルタがあり、広告ランクの算定でも広告とリンク先の品質が評価されます。金額の大きさだけで導入を決めず、検索需要と受け皿になるウェブサイトを先に確認する必要があります。 ## 月額1万米ドルは日額329米ドルの積み上げ Google Ad Grantsでは、毎月最大1万米ドル分の広告枠を利用できます。公式ヘルプでは、アカウント全体の上限を1日あたり約329米ドルと案内しています。329米ドルに月平均の30.4日を掛けると約1万米ドルになる計算です。アカウントの通貨が米ドル以外の場合は現地通貨へ換算されるため、固定した日本円の金額では表せません。 日額上限は月内で均す平均予算ではありません。ある日に200米ドルしか配信できなければ、残った約129米ドルを翌日の上限へ足すことはできません。複数のキャンペーン予算を合計329米ドルより大きく設定しても、助成枠から配信できる日額は増えません。月額枠を全額使うには、毎日ほぼ329米ドルを消化する必要があります。 弊社が支援するアカウントでは、Ad Grantsはモバイルの広告枠を取りにくく、PCからのアクセスに偏る傾向があります。週末にPCで検索する人が減ると、土日のトラフィックも落ちます。そこで使えなかった枠を平日に取り戻せないため、検索需要がある団体でも月額1万米ドルを使い切るのは簡単ではありません。これはGoogleが公開する一律の配信仕様ではなく、日別・デバイス別の掲載結果から確認している運用上の傾向です。 広告はGoogle広告の管理画面から運用します。通常のGoogle広告と同じ画面を使いますが、Google Ad Grants用に提供された専用アカウントです。助成枠から広告費が請求されることはなく、使い残しを翌月や別の広告媒体へ移すこともできません。 ## 検索している人との接点をつくる 検索広告は、すでに課題や支援方法を調べている人へ情報を届ける手段です。団体名を知らない人にも、検索した言葉と活動内容が一致すれば広告を表示できます。 相談窓口や支援サービスを探す人へ利用方法を案内する用途があります。ボランティアやイベントの参加者を募り、活動に関心を持つ人へ資料やメールマガジンを届けることもできます。寄付や会員登録を受け付けるページへ案内する運用も可能です。 一方、まだ誰も検索していない新しい言葉を短期間で広める用途には向きません。災害発生直後の告知や地域を越えた認知拡大など、検索需要を待てない施策には有料広告やSNSも使います。Google Ad Grantsだけですべての広報を担うのではなく、検索される情報を継続して届ける役割に置くと判断しやすくなります。 ## 1万米ドルは通常広告と同じ価値ではない Google Ad Grantsと有料広告は同じ管理画面を使いますが、予算と利用できる広告の範囲が異なります。助成枠に表示される金額だけを比べると、この差を見落とします。 | 比較する点 | Google Ad Grants | 通常のGoogle広告 | |---|---|---| | 広告費 | 毎月最大1万米ドル分の助成枠 | 団体が設定した予算を支払う | | 主な掲載先 | Google検索のテキスト広告 | 検索のほか、選ぶキャンペーンにより画像や動画なども利用できる | | 広告の内容 | 団体の使命、活動、サービスと関連する内容 | Google広告のポリシー内で事業目的に合わせる | | 配信量 | 日額上限と品質フィルタがあり、上限まで使えるとは限らない | 予算、入札、需要に応じて調整する | Google広告のオークションでは、入札単価だけで掲載可否と順位を決めません。広告ランクは、広告とランディングページの品質を含む複数の要素から検索のたびに算定されます。Ad Grantsには、その前段階として標準広告の一般的な品質水準を参考にする品質フィルタもあります。相対的に品質が低い広告は、入札単価を引き上げてもオークションへ参加できません。 Googleは、Ad Grantsの広告ランクへ一律に掛ける固定係数や計算式を公開していません。それでも、同額の枠があれば通常広告と同じ表示機会を買えるわけではありません。品質評価によってオークションへ参加できる機会が減り、日額の使い残しも後から回収できないためです。「月額1万米ドル相当」を、通常広告へ1万米ドルを投じる場合の市場価値へそのまま置き換えない方が良いです。 もちろん、助成枠に価値がないわけではありません。検索する人が使う言葉とリンク先の内容が一致すれば、広告費を負担せずに継続的な接点を作れます。使った金額ではなく、相談や参加、寄付など団体に必要な成果で価値を判断します。 ## 利用開始までに二つの審査がある 最初にGoogle for Nonprofitsへ申請し、団体の参加資格を確認します。日本向け資格ページには対象となる法人格が示されています。Goodstackは団体の登録と活動状況に加え、申請者がその団体に所属しているかを確認します。 Google for Nonprofitsの承認後は、管理画面からGoogle Ad Grantsを個別に有効化します。公式の有効化ガイドでは、申請中に通常のGoogle広告アカウントを自分で作らないよう案内されています。Ad Grants用のアカウントは有効化後に提供されます。 申請は次の順番で進みます。 1. 日本向けの参加資格を確認し、Google for Nonprofitsへ団体のアカウントを申請します。 2. Goodstackから追加情報や書類を求められた場合は、団体と申請者の情報を提出します。 3. 承認後にGoogle Ad Grantsの「使ってみる」から、広告で使用するウェブサイトを送信します。 4. 案内動画を確認し、有効化リクエストを審査へ提出します。 5. 承認メールとアカウントへの招待を確認し、Google広告の管理画面へアクセスします。 公式ガイドでは、有効化リクエストの審査は通常3営業日と案内されています。ただし、団体確認や追加資料の対応にかかる時間は別です。開始日が決まった企画へ間に合わせる場合は、審査期間を見込んで申請します。 ## 申請前にウェブサイトを整える Google Ad Grantsの申請では、広告のリンク先となるウェブサイトも審査されます。申請前に、団体自身がドメインを所有していることを確認します。コンテンツと構造に加え、技術設定も管理できる状態にしてください。制作会社へ更新を依頼している場合でも、団体の判断で内容を直せることが前提です。 最初に整えるのは文章量ではなく、初めて訪れた人が団体の目的と活動を確認できる情報です。トップページや団体概要から使命と主な活動を確認し、連絡先までたどれる導線を作ります。支援する相手と活動実績も説明し、法人としての登録情報や年次報告書を実在性の確認できる場所へ掲載してください。主要な情報をPDFだけに置かず、ウェブページの本文として読める形にした方が良いです。 次に、通常のメニューから主要ページへ移動できるかを確認します。リンク切れや作成中のページを残さず、問い合わせフォームと寄付ボタンを実際に操作します。外部の寄付システムへ移る場合も、安全な寄付ページが開き、手続きを完了できるところまで確かめてください。 最後に、サイト全体をHTTPSで表示し、スマートフォンで正しく操作できるかを見ます。読み込みが遅いページや混合コンテンツも修正します。サイトに有料サービスや物品販売がある場合は、その収益が団体の使命をどのように支えるのかを説明します。限定的な商業活動は認められる場合がありますが、販売や第三者広告をサイトの主目的にはできません。 審査対策として文を足すのではなく、広告から来た人が団体を理解し、次の行動を安全に完了できる状態を作ることがサイト整備です。そこまで整っていれば、申請後の広告運用でもリンク先を作り直す手戻りが減ります。 ## 広告を始める前に成果を決める 広告のクリック数だけでは、団体の活動にどのような変化があったのか分かりません。相談の送信やイベント申込など、広告の先で増やしたい行動を一つ決めます。ボランティア登録や寄付完了も成果の候補です。 Googleは、頻繁に表示される一般的なページではなく、意味のある行動を完了した後に表示されるページをコンバージョンとして計測するよう案内しています。問い合わせの送信完了や寄付完了などを計測できるか、申請前に確認します。 外部の寄付システムを利用している場合は、自団体サイトのアクセス解析だけで寄付完了まで追えないことがあります。寄付システムへ団体のGA4やGoogle Tag Managerを設定できるか、完了ページを判別できるかを確認します。 ## 導入前に三つの問いへ答える Google Ad Grantsが自団体に向いているかは、広告枠の大きさではなく三つの問いで判断します。 一つ目は、活動に関係する情報を探している人が使う検索語を説明できるかです。二つ目は、その疑問へ直接答え、次の行動を選べるページがあるかです。三つ目は、申込や寄付などの成果を計測し、毎月改善する担当者と時間を確保できるかです。 検索語は分かるものの受け皿となるページがない場合は、先にサイトを整えます。ページはあるものの成果を確認できない場合は、フォームや寄付システムの計測を準備します。三つを満たしてから申請すると、承認後に広告だけが止まる状態を避けやすくなります。 ## 承認後もポリシーに沿って運用する Google Ad Grantsの広告とキーワードは、団体の使命や活動に関係している必要があります。意味が広すぎるキーワードや、リンク先と関係のない広告を増やすことはできません。Google広告の通常ポリシーとAd Grants固有のポリシーを継続して確認します。 運用ルールや推奨される入札方法は更新されます。過去の記事や申請時の説明だけを基準にせず、Google広告の管理画面に表示される通知と現在の公式ヘルプを確認してください。違反の通知が届いた場合は、原因を修正してから再開を申請します。 最初から1万米ドルの枠を使い切ることを目標にする必要はありません。検索する人に必要なページを届け、団体にとって意味のある行動が増えているかを見ます。制度の利用額ではなく、相談や参加、寄付などの成果から広告を改善することがGoogle Ad Grantsを活かす出発点です。