--- title: "特例認定NPO法人と認定NPO法人の違い" description: "特例認定NPO法人と認定NPO法人の違いを、申請時期、PST、有効期間、税制優遇から比較します。3年間の特例認定から認定申請へ進むために、設立初期から残す記録も解説します。" date: 2026-02-02 updated: 2026-02-02 category: "組織とデジタル基盤" tags: ["組織運営"] official_sources: ["npo-act", "npo-recognition-system", "npo-recognition-acquisition", "npo-recognition-tax-differences", "nta-certified-npo-donation-tax"] related_articles: ["how-to-choose-legal-entity-for-nonprofit-groups-japan", "bequest-giving-basics-for-npo"] draft: false --- 特例認定NPO法人は、設立初期のNPO法人がパブリック・サポート・テスト(PST)を免除されて申請できる制度です。認定NPO法人の簡易版ではなく、申請できる時期と回数が限られた別の認定です。 特例認定の有効期間は3年で、更新できません。認定NPO法人は5年ごとに更新できます。個人と法人が行う寄付の税制優遇には共通点がありますが、相続財産の寄付特例と、法人自身のみなし寄附金制度は認定NPO法人だけが対象です。 二つの認定は、申請できる法人と有効期間を比べます。更新の可否と税制の範囲も異なります。特例認定から認定申請へ進む場合は、三年の有効期間内に準備を進める必要があります。 ## 特例認定は設立初期のNPO法人を対象とする 認定・特例認定は、すでに設立されたNPO法人に対する制度です。任意団体や一般社団法人が直接申請するものではなく、特例認定を受けても別法人へ転換するわけではありません。 特例認定を申請するには、申請日の前日において設立から5年を経過していないことが必要です。過去に認定または特例認定を受けた法人は申請できません。一つのNPO法人が特例認定を利用できるのは1回だけです。 設立直後に申請できるわけでもありません。申請書を提出する事業年度の初日において、設立から1年を超える期間が経過している必要があります。実際に申請できる時期は設立日と事業年度によって変わるため、所轄庁へ日付を示して確認します。 ## 二つの認定はPSTと有効期間が異なる 認定NPO法人と特例認定NPO法人の主な違いを比較します。 | 比較する点 | 認定NPO法人 | 特例認定NPO法人 | |---|---|---| | 対象 | 認定基準を満たすNPO法人 | 設立後5年未満で、過去に認定等を受けていないNPO法人 | | PST | 三つの基準のいずれかに適合 | 免除 | | その他の認定基準 | 組織・経理・事業・情報公開・法令順守等に適合 | 認定NPO法人と同じ基準に適合 | | 有効期間 | 認定日から5年 | 特例認定日から3年 | | 更新 | 更新申請ができる | 更新できない | | 個人寄付者の所得税 | 所得控除か税額控除を選択 | 所得控除か税額控除を選択 | | 法人寄付者の法人税 | 特別損金算入限度額がある | 特別損金算入限度額がある | | 相続財産を寄付した場合の相続税特例 | 対象 | 対象外 | | 法人自身のみなし寄附金 | 対象 | 対象外 | 特例認定で免除されるのはPSTです。共益的活動の割合や運営組織・経理の基準は免除されません。 事業活動と情報公開も審査対象です。事業報告書の提出や法令順守も確認されます。欠格事由に該当しないことも必要です。 ## 認定NPO法人は三つのPSTから選ぶ PSTは、市民からの支持をどのように確認するかを定めた基準です。認定申請では、相対値基準・絶対値基準・条例個別指定のいずれかを選びます。 相対値基準は、経常収入金額に占める寄付金等収入金額の割合が5分の1以上であることを基本とします。絶対値基準は、年3,000円以上を寄付した人が実績判定期間内で年平均100人以上いることを基本とします。条例個別指定は、事務所がある自治体の条例で個人住民税の寄付金税額控除の対象として指定されていることを使う基準です。 実際の判定では、寄付者と特殊な関係にある人の扱いに注意します。少額寄付や対価性のある会費にも個別の扱いがあります。数字だけを見て適合を判断せず、寄附者名簿と会計記録を所轄庁の手引きに沿って確認します。 初めて認定を申請する法人と特例認定を申請する法人では、実績判定期間は原則として直前に終了した2事業年度です。特例認定中に初めて認定を申請する場合も、認定を受けたことがなければ同じ扱いになります。 ## 寄付者の税制優遇には共通点がある 個人が認定・特例認定NPO法人の特定非営利活動に関する事業へ寄付した場合は、所得控除か税額控除を選べます。税額控除は対象となる寄付額から2,000円を引いた額の40%を基本とし、所得や税額による限度があります。 法人が行う対象寄付には、一般寄付金の損金算入限度額とは別に特別損金算入限度額があります。個人住民税の寄付金税額控除は、寄付者の住所地にある自治体の条例指定によって扱いが変わります。 これらは認定の有効期間中に行われた対象寄付について、寄付者が必要な申告をした場合の制度です。団体は認定番号・認定日・寄付額・受領日などを記載した領収書を発行します。「寄付をすれば一律に40%戻る」と案内せず、寄付者自身が申告と限度額を確認できる説明にします。 ## 相続財産とみなし寄附金は認定だけが対象になる 二つの認定で税制上の大きな違いが出るのは、相続財産の寄付と法人自身の課税です。 相続または遺贈で取得した財産を申告期限までに寄付した場合の相続税特例は、認定NPO法人への対象寄付に限られます。特例認定NPO法人は対象ではありません。個人や法人が通常の資金を寄付する場合の優遇と混同しないことが必要です。 認定NPO法人自身には、収益事業から非収益事業の特定非営利活動へ支出した一定額を寄付金とみなす制度があります。特例認定NPO法人には、このみなし寄附金制度がありません。「寄付者側の優遇が共通するため税制上の差はほぼない」とは言えません。 土地や株式などの現物寄付には、別途、みなし譲渡所得の非課税承認制度があります。認定・特例認定のどちらでも対象になり得ますが、自動的に非課税になるわけではありません。財産の種類と管理方法を含め、寄付を受ける前に税理士等へ確認します。 ## 特例認定から認定へは別の申請が必要になる 特例認定の期間が終わっても、法人格を失うわけではありません。NPO法人のまま特例認定の効力だけが失われます。認定NPO法人へ自動的に移行することもありません。 認定NPO法人になるには、PSTを含む認定基準で別途申請します。特例認定の有効期間中でも申請でき、認定を受けた時点で特例認定の効力は失われます。3年の満了後に申請することもできますが、認定まで空白期間があれば、その期間の寄付に認定等の税制優遇は適用されません。 特例認定を準備期間として使う場合は、認定申請日から逆算します。PSTをどの基準で満たすか、何事業年度の記録を使うか、審査期間中に特例認定が満了しないかを所轄庁と確認します。 ## 直接認定を申請するか先に決める 設立から5年未満でも、PSTを含む認定基準を満たせるなら、最初から認定NPO法人を申請できます。特例認定を先に受けることは必須ではありません。 PSTをまだ満たせない一方、他の認定基準を満たし、3年以内に寄付基盤を整える計画がある場合は特例認定を検討できます。設立から5年以上が経過した法人は特例認定を申請できないため、認定のPSTを満たす方法を選びます。 税制優遇の名称だけで申請を急ぐと、認定後の運用が続きません。領収書と寄附者名簿を管理し、情報公開や給与・報酬規程の提出にも対応する必要があります。現在の寄付者数と収入構成だけでなく、毎年の事務を担当できるかを判断します。 ## 設立初期から認定申請の記録を残す 特例認定の申請時にPSTが免除されても、後の認定申請には寄付記録が必要です。次の順序で準備します。 1. 所轄庁へ事前相談し、申請できる最初の事業年度と期限を確認します。 2. 寄付者の氏名・住所・金額・受領日を寄附者名簿へ記録します。 3. 会費と寄付、対価のある収入を会計上で区別します。 4. 役員構成、取引先、事業費、共益的活動の割合を認定基準に沿って確認します。 5. 事業報告書等を期限内に提出し、閲覧対象となる規程を整えます。 6. PSTの候補を試算し、特例認定の満了前に認定申請の日程を決めます。 最初に確認したいのは、団体が現在どの期間にいるかです。設立日と事業年度を一枚に並べます。特例認定中なら有効期限も加え、所轄庁との事前相談へ持参してください。