Google Ad Grantsには、通常のGoogle広告にはない制限があります。ただし、月額上限や配信面のように設定では変えられない境界と、キーワードや計測のように運用で満たす要件は別です。
この二つを混同すると、改善できる問題を制度のせいにしたり、制度では実現できない配信へ調整を重ねたりします。Ad Grantsでできる範囲を先に決め、足りない接点だけを有料広告などで補う方が判断しやすくなります。
制限は三つに分けます。制度上の境界とポリシー要件を分け、運用設定で変更できる範囲を確認します。申請手順や個別の入札設定へ進む前に、変更できない条件と運用で改善できる条件を切り分けます。
月額1万米ドルは利用上限であり配信保証ではない
Ad Grantsでは、1アカウントにつき月額1万米ドル、1日あたり約329米ドルまでの広告予算が提供されます。米ドル以外の通貨では現地通貨へ換算され、換算率は変動する場合があります。
この金額は利用できる上限であり、毎月必ず使える金額ではありません。実際の使用額は、検索数とキーワードの競争力だけでは決まりません。広告とリンク先の品質、入札、地域設定によっても変わります。助成枠が余っているだけでは、設定不備があるとも、運用に失敗しているとも判断できません。
複数のキャンペーンを作っても、アカウント全体の上限が増えるわけではありません。寄付や相談、参加募集などの目標を分け、どのキャンペーンへ助成枠を配分するかを決めます。
利用できるのはGoogle検索のテキスト広告である
Ad Grantsが提供するのは、Google検索に掲載するテキスト広告の現物助成です。検索している人へ団体の活動と支援方法を伝え、利用できるサービスを知らせる用途に向いています。
一方、SNSや動画など、Google検索以外の配信面はAd Grantsの助成対象ではありません。活動をまだ検索語に置き換えていない人へ映像で知らせたい場合や、短期間に特定地域へ認知を広げたい場合は、Ad Grants内の設定変更では解決できません。
検索以外の接点が必要なら、その目的に合う有料広告や広報手段を別に選びます。Ad Grantsの助成枠を使い切ることより、必要な相手へ適切な方法で届くことを優先します。
キーワードは団体の使命と活動に関連させる
広告とキーワードは、団体の主な活動目的を反映し、プログラムやサービスとの関連性が高い必要があります。検索数が多いという理由だけで、活動と関係の薄い語句を追加することはできません。
原則として1語だけのキーワードや、意味が広すぎるキーワードは制限されます。ただし、「寄付」「募金」「ボランティア」などは、公式ページで1語キーワードの例外として明示されています。1語であることだけを理由に削除せず、例外と団体の活動との関連性を確認します。
他団体名、地名、人名などを単独で使うことも認められていません。さらに、品質スコアが1または2のキーワードは使用できません。検索語句レポートを確認し、活動と一致しない検索には除外キーワードを追加します。
ウェブサイトは広告の受け皿として維持する
広告のリンク先は、団体が管理するドメインである必要があります。管理の対象にはコンテンツと構造、技術設定が含まれます。サイトにはミッションと活動を説明する独自の内容があり、訪問者が必要な情報や行動先を見つけられる状態が求められます。
リンク切れや動かない寄付ボタン、遅い表示は広告だけでは直せません。モバイルで操作しにくい画面もサイト側の問題です。サイト全体をHTTPSで配信し、広告から開いたページだけでなく、団体概要から寄付までの経路も点検します。活動情報と問い合わせ先も確認します。
営利活動が一律に禁止されているわけではありません。団体の使命に関連する限定的な販売は認められる場合がありますが、それをサイトの主目的にはできません。過剰な第三者広告や、アフィリエイトリンクで別サイトへ送ることを主目的とする構成も認められていません。
アカウント管理には継続要件がある
承認後も、Ad Grants固有のアカウント管理ポリシーを満たす必要があります。地域ターゲティングは、団体の情報やサービスが役立つ地域に合わせます。各キャンペーンには、異なるリンク先を持つサイトリンク広告アセットを2件以上設定します。
スマートアシストキャンペーン以外のAd Grantsアカウントでは、アカウント全体の月間クリック率を5%以上に保つ必要があります。個々のキーワードをすべて5%以上にする要件ではありません。2か月連続で基準を満たさない場合は、一時停止の対象になります。
アンケートへの回答など、プログラムへの協力も参加要件に含まれます。無料の広告枠を受け取った後は何もしなくてよい制度ではないため、通知先メールと管理担当者を決めておきます。
入札とコンバージョンは作成時期を確認する
入札要件は、すべてのAd Grantsアカウントを一律に説明できません。公式のアカウント管理ポリシーでは、2019年4月22日以降に作成されたアカウントについて、コンバージョンベースのスマート自動入札をすべてのキャンペーンで使うよう求めています。
ただし、コンバージョンデータがない開始時点には、クリック数の最大化で初期データを集める案内もあります。その場合も、先に正確なコンバージョン計測を実装し、データが得られたらコンバージョン数の最大化またはコンバージョン値の最大化へ移ります。
寄付金額を正確に取得できないのに、仮の金額を設定してコンバージョン値の最大化を選ぶ必要はありません。寄付完了数を正確に記録できるなら、件数を成果として入札を設計します。作成日、現在の入札戦略、主要なコンバージョンの三つを一緒に確認します。
意味のあるコンバージョンを正確に記録する
Ad Grantsでは、団体にとって意味のある行動をコンバージョンとして設定します。寄付と購入のほか、会員登録やメール配信登録が例です。ボランティア登録と問い合わせも含まれます。広告のクリックやホームページの表示だけを、すべてのキャンペーンの成果にするものではありません。
2019年4月22日以降に作成されたアカウントでは、指定された種類のコンバージョンを少なくとも一つ設定し、月1回以上獲得する必要があります。2018年1月1日以降に作成されたアカウントや、コンバージョンベースのスマート自動入札を使うアカウントにも、有効な計測と月1回以上のコンバージョンが求められます。
外部の寄付システムを使う場合は、自団体サイトの寄付ボタンだけで計測を終えず、可能な範囲で寄付完了まで記録します。サイト滞在時間やホームページへのアクセスを補助的に残す場合は、主要なコンバージョンから除外します。
制限を三種類に分けて次の手段を決める
制限へ対応するときは、設定を触る前に種類を分けます。制度上の境界はAd Grants内では変えられませんが、ポリシー要件と運用設定は自団体で確認し、改善できます。
| 制限の種類 | 代表例 | 取るべき対応 |
|---|---|---|
| 制度上の境界 | 月額上限、Google検索のテキスト広告 | 検索以外の接点や追加予算が必要なら別の手段を選ぶ |
| ポリシー要件 | 使命に沿うキーワード、サイト品質、地域、サイトリンク、クリック率 | 違反箇所を特定し、広告、キーワード、サイト、構成を修正する |
| 運用設定 | キャンペーン配分、入札戦略、主要なコンバージョン | 成果目標と計測状況に合わせ、設定後の実績を確認する |
たとえば、動画で活動を伝えたいのにAd Grantsのキーワードを増やしても、制度上の境界は変わりません。一方、検索広告が表示されないときに、制度のせいだと決めつけるのも早いです。活動との関連性を確かめたうえで、サイトと地域を確認します。入札と計測にも問題がないかを調べます。
最初に達成したい成果と対象者が使う検索語を書きます。同じ紙へ広告のリンク先と、完了を記録する場所も加えます。その導線がGoogle検索のテキスト広告で成立するならAd Grants内を整え、成立しない部分だけ別の広告や広報手段へ分けてください。