Google Ad Grantsには、非営利団体の運用を支援する認定プロフェッショナル代理店の制度があります。ただし、現在の公式一覧には、日本国内を拠点とする事業者が掲載されていません。

日本の団体が外部へ運用を任せる場合、海外の認定代理店と、認定を受けていない国内の運用代行会社が候補になります。認定は専門性を知る手掛かりですが、アドグランツを運用するための免許ではありません。

Googleは、日本に認定代理店がない理由を公表していません。一方、広告代理店の手数料モデルと実際の運用負担を見ると、国内で専門サービスが続きにくい背景が見えてきます。

Googleは、非営利団体とアドグランツを専門に扱う事業者を、認定プロフェッショナル代理店として公式一覧に掲載しています。

英語ではCertified Professional Agenciesと呼ばれます。Googleは、アドグランツの要件や機能に詳しく、非営利団体の広告管理を支援する事業者として案内しています。一般のGoogle広告を対象とするGoogle Partnerとは別の制度です。

公式一覧への掲載は、アドグランツの経験を持つ事業者を探すうえで意味のある基準です。ただし、日本語への対応や日本国内での契約までGoogleが保証するものではありません。

日本国内の認定代理店は公式一覧にない

公式一覧に掲載されている45事業者を確認しましたが、日本国内に所在地を置く事業者は見つかりませんでした。

地域をAsia Pacificに絞ると、香港のDiscovery Ad、シドニーのReef Digital AgencyとDigital Ninjasが表示されます。3社とも日本国内の事業者ではありません。地域の選択肢に日本はなく、対応言語にも日本語は含まれていません。

日本語を話せる担当者が一人もいないことまでは、この一覧から判断できません。しかし、日本国内の認定代理店を公式一覧から選べる状態ではないことは確認できます。掲載先は変わる可能性があるため、国内不在は2026年9月6日時点の状況です。

広告費に連動する手数料と相性が悪い

国内不在を説明するGoogleの公式資料はありません。ただ、通常の広告運用で使われる料金体系は、アドグランツへそのまま当てはめにくいものです。

有料広告の運用代行では、Googleへ支払う広告費の一定割合を代理店の手数料にすることがあります。国内にも、運用代行費を広告費の20%とする料金例があります。この方式なら、広告主の出稿額が増えるほど代理店の売上も増えます。

アドグランツでは、団体がGoogleへ広告費を支払いません。月額1万米ドルは、アドグランツの広告オークションで使える月ごとの利用枠です。同額の金銭的価値があるわけではなく、未使用分も翌月へ繰り越されません。

仮に利用枠の20%を手数料にすれば、月額2,000米ドルになります。しかし、実際に配信された金額や団体が得た成果とは関係なく、非営利団体が負担できる水準にも収まりにくくなります。媒体費を基準にする料金モデルでは、運用の対価を決めにくいのです。

運用の難しさに対して料金を上げにくい

広告費が発生しないからといって、アドグランツの運用が簡単になるわけではありません。弊社の運用経験では、広告費で掲載機会を広げにくい分、広告とサイトの両方に踏み込む判断が必要です。

検索する人の意図と広告、リンク先が合わなければ、十分な表示やクリックを得られません。サイトに必要な情報がなければ、広告設定だけを変更しても改善には限界があります。

寄付や相談の完了を正確に計測し、その結果を自動入札へ返す設計も必要です。強制停止が起きた場合は、違反箇所を直すだけでなく、Google Ad Grantsサポートチームへ是正内容を説明することもあります。

こうした対応には、一般のGoogle広告とは異なる知識と担当者の時間がかかります。一方で、依頼元は運用予算の限られる非営利団体です。必要な技術と、団体が負担できる料金の間に差が生じやすくなります。

高度な担当者を有料広告の案件へ配置した方が、代理店は大きな売上を得られます。国内のアドグランツ案件が少なければ、専門知識を持つ担当者と支援体制を維持することも難しくなります。この採算の合いにくさは、サービスへの参入や継続が進みにくい背景として考えられます。

海外の認定代理店は固定料金で専門化している

海外には、広告費の割合ではなく、固定月額でアドグランツを専門に扱う認定代理店があります。一般の広告代理店とは異なる収益モデルです。

2026年9月6日時点で、公式一覧に掲載されているKinsey Streetは月額249米ドルから運用を提供しています。TechSoupの継続運用も月額289米ドルからです。

多数の非営利団体を対象にして、アカウント構築や継続運用を標準化できれば、固定料金でも専門サービスを成立させやすくなります。日本の団体が依頼する場合は、英語でのやり取りに加えて、日本語の検索語句や国内の寄付行動まで扱えるかが別の判断になります。

国内の運用代行会社は認定がなくても支援できる

認定プロフェッショナル代理店でなくても、国内事業者はアドグランツの運用を支援できます。認定の有無と、Google広告アカウントを操作できる権限は別だからです。

Google広告には、代理店などが顧客のアカウントを管理するための管理アカウントがあります。団体が既存のアドグランツアカウントへ適切な権限を付与すれば、国内の運用代行会社もキャンペーンを管理できます。

Google Partnerも、アドグランツの認定とは別です。Google Partnerの要件は、一般のGoogle広告における実績と利用額、担当者の認定資格です。アドグランツ固有の運用経験までは分かりません。

国内の事業者は認定より対応範囲を見る

国内では認定の有無を比較基準にできないため、実際にどこまで問題を扱えるかが重要になります。広告管理だけを依頼したいのか、サイトや計測を含めて成果を改善したいのかによって、必要な支援は変わります。

アドグランツで配信を増やすには、広告の操作だけでなく、検索に応えるページが必要になることがあります。クリック後に寄付や相談へ進めない場合は、団体のマーケティング施策まで理解していなければ原因を切り分けられません。

強制停止中であれば、現在のポリシーを理解し、Google Ad Grantsサポートチームとやり取りした経験が支援範囲を左右します。詳しい復旧の流れは、Google Ad Grantsが強制停止されたときの復旧方法で説明しています。

運用を任せても、アカウントの管理者権限と運用履歴は団体側に残ります。Googleの第三者ポリシーでも、支援事業者には料金と成果の透明性を保ち、求められた場合はお客様IDを提供することが求められています。

日本国内に認定代理店がないことは、相談できる事業者が存在しないという意味ではありません。認定の代わりに多くの資料を求めることより、現在困っている問題をどこまで扱えるかが、その団体に合う支援かを判断する材料になります。